スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
このエントリーをはてなブックマークに追加

まさかとは思いますが、この「異世界転生チーレムしか認めない読者」とは、あなたの想像上の存在にすぎないのではないでしょうか

もしそうだとすれば、あなた自身が問題の原因であることにほぼ間違いないと思います。


「小説家になろう」の話。
このサイトで常にランキング入りしているのは、日本人の冴えない男が異世界に転生または転移して、神様にチート能力をもらって、時には現代知識で俺TSUEEEしながらたくさんの女の子を抱え、周囲に大絶賛されて英雄になっていく物語。
これを俗に、「異世界転生チーレム」(=異世界転生+チート+ハーレム)と呼ぶ。
これに属する作品は、序盤の流れなどがほぼ決まっており、なぜかゲーム的な世界観や用語までもが統一されていたりするなど、究極のテンプレ産業と言えるかもしれない。

ところで、界隈では、小説家になろうというサイトにはこの「異世界転生チーレムしか認めない読者」というのが大量に棲みついている、とまことしやかに言われている。
だけども、それ、本当であろうか?

「異世界転生チーレムじゃないから認めない!」って、誰かが言ってるところを見たことが無いのだが。リアルにしろ、どこかの掲示板への書き込みにしろ。
「異世界転生チーレムしか認めない読者」の存在をまことしやかに語っている人は、一体どこでそういう文言を見たのだろう?
2chで?まとめサイトで?マックの隣の席で?
それとも、「小説家になろう」自体の中で?
もしそういう目撃情報があるのなら、今すぐ教えて欲しい。
できればその「異世界転生チーレムしか認めない読者」を目の前に連れてきて欲しい。今すぐ。
そいつと語りあかしたい。

で、私自身の調査によれば、そんな存在はいない。
今現在「なろう」の総合ランキングにおける、第一位「無職転生 - 異世界行ったら本気だす -」、第三位「八男って、それはないでしょう!」、第四位「異世界迷宮で奴隷ハーレムを」は、いずれも異世界転生チーレムである。
「ほら、やっぱり読者は異世界転生チーレムしか読まないんじゃん!」と言う前に、その「感想」欄を覗いてみよう。
それぞれの作品を褒めている人のコメントを適当に抽出してみる。

無職転生
・最初から引き込まれるものと、完結(筆者注・簡潔の誤変換か)でわかりやすい文章がとっても良かったです。気づいたら全ての作品を一気に読んでしまいました。
・ハーレム作る時1人1人の描写がちゃんとあったこと。大抵の作品だとなし崩し的にハーレム作ってるけどこの作品は理由を持たせられてて流石一位だと思いました
・一つの固執化したストーリーに囚われず、様々なストーリーが重なっていくところ。恐らく作者さんは、物語を書いていく過程でその先を考えずに書いていったのでしょう。だけどそれを上手くまとめる事が出来る発想力と文学力。それに第三者目線から見る推察力には脱帽です。

八男(長すぎる上に最近ほとんど褒められて無いので1010頁あたりを抽出)
・やっぱり、ギリギリの戦闘があると楽しいようです。
・師匠とヴェルの昔話が出て来て嬉しかった。冒険らしい冒険の話でチートさが無くいっぱいいっぱいな印象が出て良い話だった。
・いくらチートのヴェルでも苦戦するこの戦闘シーン熱くなりますね…。

奴隷ハーレム(長すぎる上に最近ほとんど褒められて無いので501頁あたりを抽出)
・内容が濃い。セリーが可愛い!
・テンポ良く物語が展開されているところです。 読みやすく長すぎない程度の文が丁度よいと思います。
・いつもながら検証しつつの攻略は読んでて楽しいですねぇ。次に取りたいジョブとかパーティー編成とか武具につけるスキルとか、想像が膨らみます。

はい、こんな感じだが、直接的にしろ間接的にしろ、「異世界転生チーレムだから好き」と書いている感想はなかなか見当たらないよね。
というか気になったのは悪い点ばかりを書いている読者層の多さで、こいつら文句つけるためにブクマしてんじゃねーかと。もしそうだったらこれらがランキング入りしてるのお前らが原因でもあるぞ?

さて、じゃあ「異世界転生チーレム最高」と叫ぶ書き込みはどこで見ることが出来るのだろう。
ひとつの可能性として、日々様々ななろう作品を紹介しあっては感想を書いている「小説家になろうおすすめ・雑談スレ」(おーぷん2ちゃんねる)とそれをまとめた「スコ速」というサイトがある。
スコ速の過去記事で、異世界転生チーレムを紹介している部分を探してみよう。

で、こんな記事を見つけた。
小説家になろう:こういう感じの軽めな転生物でオススメありませんか?
コメント欄も含めて出来れば下まで読んで欲しいけど、特に転生だからオススメ、チートだからオススメとかそういうのはない。
たとえば「異世界の迷宮都市で治癒魔法使いやってます」は、コメント欄で次のように評されている。

ヒロインが可愛いんだけど主人公が変に良識を持ってるから、その頑張りも面白い
サブヒロイン?との空気も良い、ご都合的なデレとかはあんまり感じないのも高ポイント
ヒロインのデレも顔面ズタボロ、餓死しても構わないような待遇の底辺奴隷から助けてもらったってのが納得いく理由になってる
その後も勘違いでボロボロになりながらヒロインを探したり、ヒロインのトラウマの魔物の囮になったりホントちゃんとやるべきところで泥臭く頑張ってる姿が良いと思う



調査結果。
「異世界転生チーレムだから評価する読者」は、いない。
皆それぞれの理由で作品を読んで、それぞれの理由で評価を下している。
今のところそうだとしか思えないのだ。


では、なぜ異世界転生チーレムばかりがランキング上位に上がるのだろうか。
Googleなんかで「異世界転生チーレム」と検索すれば、いかに多くの人がこのタイプの小説を毛嫌いしているかがわかる。
殊更にこのジャンルを好きな人はいない。殊更に嫌いな人はいる。
それなのになぜそのジャンルばかりが流行るのか?

私は、異世界転生チーレムは「最大公約数」だと思っている。

試しに「小説家になろう」の、異世界転生/異世界転移以外のジャンル別ランキングで、それぞれ一位の作品を開いてみる。
そして、ページ下部の「この小説をブックマークしている人はこんな小説も読んでいます!」を見てみよう。
ハイファンタジー、ローファンタジー、ヒューマンドラマ、歴史、推理、ホラー、アクション、コメディ。
それぞれの作品は全く異世界じゃなかったり、転生してなかったり、チートじゃなかったりするが、それぞれの「この小説をブックマークしている人はこんな小説も読んでいます!」欄は……おおう、すごい。
ほぼ異世界転生チーレムで埋め尽くされているし、上で紹介した「無職転生」「八男」「奴隷ハーレム」の登場率もすごい。

つまり、ホラーが好きな人、ミステリが好きな人、様々なジャンルにファンはいるのだが、そういう人たちだって別に「自分の好きなジャンル」だけしか読まないわけじゃない。
その全員にとって、異世界転生チーレムは「まあ読んでもいい」くらいの立ち位置にあるジャンルなのだと思う。
私自身、好きなジャンルはと聞かれればミステリや現代異能バトルになるのだが、「なろう」でのブックマークには異世界転生チーレムも多く含まれている。それは、それぞれの小説の中に自分の好きな要素が何か含まれていたからだ。
異世界転生チーレムは、多岐にわたる読者の「まあ読んでもいいか」層を取り込みやすい。
その結果、ランキング入りする作品も多くなったのだと推測している。

さらに、これらの作品の評価には「読みやすさ」が大きく影響している。
上で挙げた感想でも、簡潔でいい、テンポがいい、など、「軽さ」が高評価に貢献していることは間違いない。
先ほどのスコ速の記事でも、このような面白いレスがあった。

ポテチ一口食ったらいつの間にか袋がカラになってたみたいな感じ。
濃厚な頭の奥まで痺れる位に作品にのめり込むばっかりが楽しみ方じゃない



とてもわかりやすい。
のめりこむ「ばっかりが」楽しみ方じゃない、と書いてある。
つまり、のめりこむこと作品の楽しみ方であると、それは当然の前提であるとして、だけども軽く読めるのもそれなりに良さがある、と言っている。

これはかなり真理を衝いていると思う。
小説を読むと言う行動は、通常、物凄く労力が要る。
それでも「超読みたい小説」であるから、スラスラと読むことが出来る。
一方、異世界転生チーレムは、それほど読みたい小説でなくても、労力を要さずスラスラと読めてしまう。
なろう小説なんか読んでる読者は、本好きじゃないとか、本当の小説を読んだことが無いとか貶されることもあるが、これは間違いだと思う。
私のように、毎朝伊坂幸太郎を読みながら出勤し、帰りには毎晩なろう小説を読んでいるようなヤツも当たり前のようにありふれているんじゃないか。

誰にとっても「超読みたい」ジャンルではないが、
誰にとっても「まあ読める」ジャンルであって、
なおかつそれでも許される軽さを持っている。
これが、異世界転生チーレムばかりがランキング入りしてしまう真の理由ではないだろうか。

この風潮ができあがってから、さらに事態は加速した。
「異世界転生チーレムしか認めない大量の読者」の存在が都市伝説のように信じられ、その結果、それを信じて異世界転生チーレムしか書いてはいけないように考える書き手が増えてしまった。
結局異世界転生チーレムであろうと、伸びていない小説は全く伸びていない。
そして書き手側はなんとか安定して伸ばそうと、「伸びることが証明されている」様々な手法を使い、世界観、用語、序盤の流れなどが固定化される。
それは「伸びることが証明されている」手法であることは確かなのだが、「誰もが気に入っている」手法ではない。
「誰もがまあ読んでもいいと思える」手法なのだ。

テンプレを使うのは、楽だ。
読者の中に共通の世界観、認識があるのなら、それを最大限使ってやった方が双方無駄な苦労をせずにすむ。
つまり、現状のランキングは、読者の「読む努力」の怠慢でもあり、作者の「書く努力」の怠慢でもあるのだ。
互いにそのことを直視せずに、「異世界転生チーレムしか認めない読者」などという想像上の存在を作り出している限り、「なろう」というサイトはあなたの望む方向には進まないだろう。
関連記事
スポンサーサイト
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。