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【超ネタバレ】「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」の読書感想

ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)
七月 隆文
宝島社 (2014-08-06)
売り上げランキング: 253


読書感想を始めたら、まず初めにこの本のレビューをしようと決めていた。

最初に断っておきたいのだが、私は本を読んで良い印象を抱くこともあるし、悪い印象を抱くこともある。
そしてこの場では、特にその「良い印象」だけを丁寧に摘み上げて「感想」にしようと言うつもりはない。きっと、批判的な意見もガンガン言ってしまうと思う。
悪いと感じた本に対し、妙にバランスを取る為に一部を褒めちぎったりもしないと思う。まぁそんな悪い印象を垂れ流すだけの感想なら最初から書かないだろうが。

その上で、なのだが。
私はこの物語に対し、正と負の両方の感想を持っている。
おかげで自分の中での評価をどうしていいかずっと悩み続けている。こんなことは本当に珍しい。少なくとも自分の読書体験の中では初めてのことだった。
この言語化しにくい感覚をどうにか言葉にまとめてみたいと思い、私は読書感想を始めることに決めた。つまりある意味ではこのブログ自体、この本のために開設したと言っても間違いではない。

ネガティブな印象の最大の原因として、私には、(いや私だけではないと思うが)この作品の構造というか、いわゆる「オチ」が序盤の段階でほぼ読めてしまったということがある。
もっといえば、実は本を手に取った段階で7割方わかってしまった。その原因はもちろん、あの露骨なタイトル、それに帯である。
「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」。このフレーズの通りの内容をまともに成り立たせようと思えば、当然2人の時間軸が逆行していないといけない。この時点でSFか、ファンタジーか、何かその辺の要素が入っているなと睨むことになる。
さて、視点をほんの少し移動させると、そこには帯があり、でかでかとこんなことが書いてある。

「彼女の秘密を知ったとき、きっと最初から読み返したくなる」
「泣ける」


もう、これで話の大枠を掴むことができるが、さらに裏返して、帯の裏側を読んでみる。

「序盤のラブラブぶりがあるからこそ、終盤の切なさが際立ちます。彼女が事あるごとに涙を流す理由を知ったときは胸が締め付けられました。出会った日の、愛美の別れの言葉を読み返すと泣けるな~」


あれっ?もうこれ、物語のほぼ全てを表してないか?
読む前から、そう思ってしまった。
この、読書メーターから引用したという感想。ネタバレを避けようという努力は見て取れるが、タイトルと、帯のほかの部分をあわせて考えれば誰にでもわかってしまう流れだ。

そこで、私は本を置くこともできた。

しかし、なぜかそれはできなかった。帯に書かれている「きっと最初から読み返したくなる」というキャッチフレーズ。まさに私はその、「最初から読み返したい」状態になってしまった。まだ一度目を読んですらいないのに。
ヒロインの愛美という女の子が未来から過去へと時間を逆にたどる体質を持っていて、主人公と恋をし、同じ時間を生きられないことに涙しながらも、自分のことを知らなくなっていく主人公の前で健気に笑ってみせる、そんな話だということはタイトルと帯でバレバレだったのに。
ずるいじゃないか。そんな話、読まずにはいられないじゃないか。
半ば強制されたような気分で、私はとりあえず少しだけ読んでみようと立ち読みを始めた。

32ページ目まで読み進めて、

「また明日ねっ!」


本屋で立ち読みしたまま、泣くかと思った。
これはまずいと思った。ゾンビみたいにその本をカウンターまで運んだ。気付けば買っていた。

そして近くの喫茶店で、一気に最後まで読んだ。
最後の扉を撫でるシーンで、涙があふれてきて、少しだけ本当に泣いた。
この本を読んだ感想は、「ずるい」だ。後にも先にもそれしかない。
突っ込もうとすれば、突っ込める部分はいくらでもある。時間ものには必須とも言える、タイムパラドックスの処理がほぼ為されていない、とか。異世界関係の細かい背景や、異世界交流の設定が雑すぎる、とか。あとこれは非常に個人的な好みだが、私の嫌いな「ご当地ネタ」が満載なところとか。
設定自体も、特に斬新だとか、誰にも思いつけない発想だということでもない。文章力も語彙力もプロ程度にはきっと凄いけれど、平均的なプロ作家の域を超えているわけではない。
でもこれは、そういう話ではないんだと思った。
背景とか設定とか文章とか、そういうものを飛び越えて直接感動させてきた。暴力的に感動を与えられた。
だからこそ私は、この作品を「ずるい」と思う。
私も作家になりたいと思うような、ワナビの端くれみたいな心がある。
ではあなたのなりたい理想の作家はと聞かれると、たぶん米澤穂信さんとか河野裕さんを挙げると思うし、そこに七月隆文さんは今のところ入っていない。
でも、理想の作品はと聞かれれば……全く悔しいことだが、おそらくこの作品を挙げることだろう。
ジャンルとか好みとかネタバレとかそういうものを全て飛び越えて読者に感動をもたらす。こんな作品が書けたら、と夢見てしまう。

この先、この本を読み返したい気持ちになるかどうかは今のところわからない。
でも私の読書体験の中で、この作品は決して忘れられない一冊になったことは確かだ。
そういう意味で、私はこの本の評価をどうにも決められないでいる。
いや本当は、認めたくないだけかもしれない。どうしても星をつけるとすれば、5つしか付けようが無いのだから。オチまでわかっていたのになおその評価をつけざるを得ないというその事実がどうしようもなく悔しくて、いつまでも認められないだけかもしれない。
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